ある月の利用件数について、「前月より増えた」と「前年より減った」が並んでいます。一見すると食い違いに見えますが、比べている相手が違えば、両方が成り立つことがあります。
増えたか減ったかを読む前に、「何月の、どの数字と比べたのか」を書き出してみましょう。ここでは実在の統計ではなく、計算のために作った小さな例を使います。
三つの値を別々の欄に置く
架空の施設の利用件数を、今年の九月は100件、今年の十月は120件、前年の十月は150件とします。今読んでいる数字は今年の十月の120件です。
前月比を考えるときの相手は、今年の九月の100件です。一方、前年同月比の相手は、前年の十月の150件になります。120という数字は同じでも、隣に置く数字が変わります。
ノートには「今年九月」「今年十月」「前年十月」と、省略せずに見出しを書いてください。「前」「今」「去年」だけでは、後日見返したときに対象月を取り違えやすくなります。
差と割合を順番に計算する
前月との差は120−100で20件。前月の100件を分母にすると、20÷100=0.20なので20%増です。前年同月との差は120−150でマイナス30件。150件を分母にすると、−30÷150=−0.20なので20%減です。
同じ月について「前月比20%増、前年同月比20%減」と書けます。矛盾ではなく、比較相手の違いです。この例では割合の大きさが偶然同じになっていますが、いつもそろうわけではありません。
比較だけで理由を決めない
計算ができても、件数が変わった理由までは分かりません。開催日数、数え方、対象範囲などの情報がなければ、原因についての説明は別の課題として残ります。
前年の同じ月と比べたからといって、条件がすべて同じになるわけでもありません。注記に集計方法の変更がないかを確認し、比較できる範囲を確かめます。資料が対象に含めていないものを読む習慣も役に立ちます。
見出しを短くするときも相手を残す
自分の要約では「利用が20%増えた」だけにせず、「今年十月は前月より20%増えた」と書きます。必要なら前年同月との比較を次の文に分けます。
最後に、件数そのものも残しておきましょう。割合だけを抜き出すより、120件という今回の値と二つの比較相手がそろっている方が、読む人が計算と説明を確かめられます。

